JR熱田駅を跨ぐ熱田陸橋(市道豆田町線)に一方通行の自転車道が開通(おまけ)

道作りと市民意見

熱田陸橋の自転車道の東端の一部区間が自転車専用通行帯となっている件について、市の担当者の方からお話をうかがったところでは、駐車需要に応えるためだということでしたが、こうも言っておられました。「いまは市民から反対の声が上がったら無視することは難しい」

「? それはつまり地域住民の方から、自転車道として柵を設置することに反対意見があったということですか?」とおたずねすると「そうではない」と。曰く、全区間を自転車道にしてしまうと、そうした反対意見が出るであろうことがそれなりの確信を持って予想された、もしそうなるとその対応で計画が何ヶ月も遅れてしまう、そのため苦情を先回りする形で自転車専用通行帯としたのだと。

この対応について、余計な気を回しやがって、という感情もないではないのですが、兎にも角にも「車道を1車線減らして」「自転車道を通す」という計画を迅速に進めることがいちばん大事なことですし、下手に地元意見など聞こうものなら他にどんな横やりが入るかわかったものではありません…というと地域の声をないがしろにするのかと言われそうですがもちろんそういうことではありません。ここが道路というものの難しさだと思うのですが、道路の利用者というのは大抵はそこを「通過する」人たちであって、そこに住んでいる人たちは一部でしかないのです。もちろん町というのは道を含めてのものですし、ある地域に暮らす人たちが道路の変更によって不便を被ったり危険なめにあったりすることは避けなくてはいけません。それでもやはり、道のメインユーザーというのは(とくに今回のような幹線道路では)地域住民と重ならないことも多く、各々のニーズもその切実さも違ってきます。

そうした違いに加えて、そもそも地域住民は団結が容易であり、逆に道路を通る人たちの意見を集めるのにはそれなりの手間と時間(と行政がそれを費やす覚悟)が必要になってくるという点も押さえておかなくてはいけません。近所に住んでいる(けれども自転車で陸橋を渡ったりなどしない)人たちを集めて意見を聞きました、というのは、正しいように見えて、実は誰も幸せにしないやり方なのかもしれないのです。

じゃあどうすればいいのかといえば、道路を通る人たちの意見を集める仕組みを作るべきでしょう。つまりは町や道路の変更について情報を集めて自転車利用者や歩行者(つまりはクルマに乗らない人たち)に知らせるとともに、それについての意見を集約して行政に伝えるとともに行政との対話の場を作る、そういったことができる団体を作るのです。いったいどうやって? そうですね、コメント欄に連絡先を書いていただけるとありがたいのですが、まずは同じように「自転車のためになにかしたい!」と思っている人たちと話してみるのもいいかもしれません。

いやあたしゃ安楽椅子タイプで…という方はSNSで名古屋の自転車環境についてどんどん発言してみてください。ビビっときたらDMを飛ばしますw

もちろん名古屋市さんもこのままではいけません。まずは、自転車政策について話し合う場に、自転車関連の専門会議に「よくいるふつうの自転車利用者」を呼んでください。私のようにスポーツ自転車で車道をかっとばしているおじさんを呼んでも意味がありません。だって、30km/h以上で走っていれば後ろから迫ってくるクルマにも余裕をもって対処できますし、ドライバーにしてもそれは同じなので、15km/hで走っている人とは安心感が段違いです。それになんといってもおじさんなので、多少邪魔くさくしていても、文句を言ってくるドライバーは私より屈強な男性に限られます。そんな人が見ている光景は、それはもうママチャリで歩道を走る女性とはまったく違ったものなのです。

以前、一度だけ特別ゲストとして名古屋市の女性職員が会議に呼ばれるのを見たことがありますが、たいへんまっとうな意見を述べられていて、禁止されていなければ拍手喝采したところでした。それから、三輪という特殊な自転車の利用者として脳性麻痺のある方をメンバーに加えたのも慧眼でしたね。発言がどれだけ計画に反映されているかというと微妙なところではありますが。

みちづくりはまちづくり

最後にひとつ。私が「ガードレールの土台がでかくて邪魔ですね、もうちょっとスリムなものにできませんか。安全性が問題なら制限速度を下げるとか…」といったような発言をした際に、市の方からは「ここは都市計画で定められた主要幹線道路※ですからそういうわけにはいかないんですよ(苦笑)」というお返事がありました(※すいません正確な用語は覚えていません。なんかそういう感じの単語でした)。このときお話をうかがったのは緑政土木局でしたし、緑政土木局はできた計画にしたがって道路や街を作るのが仕事ですからこの返事におかしなところはないんですが、やっぱりそこで話が止まっていてはいけないと思うんですよね。いままでクルマが滞りなく流れることしか考えていなかった道路を、歩行者自転車のためのものに変えていこう、道路に新しい役割を与えよう、というのはすなわち、街のありかたも変えていこう、クルマがなくても安全・便利に暮らせる街にしていこう、ということなんです。それって、まさに都市計画とやらを新しくするということじゃないですか。その更新作業がどれだけめんどくさくてどれだけの利害調整を必要とするのかわかりませんが、やらなくちゃいけないのだからやるだけじゃないですか、やりましょうよ、と言っていきたいです。

だいたいその都市計画とやらには「自転車が安全快適に走れる」ための道路の要件についてなにか一言でも書かれているんでしょうか。そこをはっきりさせておかないと、自転車インフラはいつまでたっても、スキマ行政とでもいうべき、やっといたほうがいいよね、できそうだったら隙をみてやっとこうか、みたいな位置付けのままです。こういったことを考え合わせると、自転車関連政策の主体は、実行部隊である緑政土木局だけでなく、住宅都市局、交通局、スポーツ市民局(たしか交通安全担当)に対して横断的に権限をもつような独立した部局であるべき…というのはたしか自転車活用推進計画のパブコメに書いたのですが、お読みになったどなたかお一人にでも頷いていただけたのでしょうか。

話がずいぶん遠いところまできてしまいました。この熱田陸橋は名古屋市でほんとうに久しぶりにできた大きな足がかりです。ここをしっかりと固めた上で、次のステップを正しく踏み出すため、これからも情報発信していきたいと思います。読んでいただいたみなさま、どうか今後ともよろしくお願いします。

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