令和5年4月に実施された、栄・矢場町・伏見・大須観音を中心とした自転車等放置禁止区域の拡大から気がつけば2年あまり。その影響について名古屋市は「令和6年度の調査結果によれば、放置自転車等の台数は 3,807 台となり、前年度から 2,527 台減少(対前年度比 △39.9%)しました」「ピーク時である昭和 62 年度の放置台数 64,362 台から、約 15 分の 1 に減少しました」と誇らしげに発表し、新聞でも「愛知県内の放置自転車が前年度から42.9%減少 過去最少になった背景は…:中日新聞Web」と報じられています。
しかしこうした発表・報道では、放置自転車対策が自転車利用そのものを減らしてしまっているという点には触れられないのが常です。ということで、一市民である私が代わってお伝えすることにします。名古屋市は「放置禁止区域指定を実施するとこれまでの本市の実績では自転車は5~6割に減少」と言っていますが、今回もそのようになったのでしょうか。
参照したデータは、名古屋市が毎年作成している「◯◯年度自転車等駐車状況調査」というドキュメントです。ただし、上に挙げた令和6年度の調査結果は後半部分、鉄道駅やバス停周辺の駐輪台数(駐輪場の中と外ぞれぞれ)がまとめられた表などが省略されたものでして、省略なしの全体を閲覧するには、西庁舎1階の市民情報センターを訪問する必要があります…が、担当課にお願いするとご親切にもPDFデータを送っていただけたので、グラフにしてみました。
中区内の駅やバス停周辺の、「駐輪場内にあった自転車」+「駐輪場外にあった自転車」=総駐輪台数のここ6年間の推移です。
新型コロナウイルス流行にともなう緊急事態宣言が出されていた令和2~3年のあいだ、密を避けるために自転車利用が増えただとか外出自体が減ったので自転車も減っただとかいろいろ言われていますが、年に1回だけの調査でデータにばらつきがあるせいか、駅ごとに傾向はさまざまですね。久屋大通、伏見がさほど変わっていないのはオフィス街への通勤利用者がメインだからでしょうか。いっぽう栄、矢場町は年々自転車利用が減少傾向たったところで令和5年にとどめを刺されたといった様子。
こちらは平成30年度調査の結果を100%としてグラフにしたもの。やはり栄、矢場町、それから大須観音のR4~5年度にかけての落ち込みは深刻で、おおむね市の予告通り5割減を達成しています。また、上のグラフでは埋もれてしまっていましたが、金山の駐輪台数も6年間で3割以上減っています。金山駅の放置禁止区域が直近で拡大されたのは令和4年11月1日なのですが、それ以前に大きく数を減らしているのが不気味です。
こうした自転車利用者(駐輪台数)の減少の理由が、自転車固有のものなのか、それともエリアとしての魅力が薄れたせいなのか、それを判断するには自転車以外の交通機関の利用者数との比較も必要になってくるかと思います。とりあえず手元に市営駐車場の利用台数の資料があったのでご紹介します。
最寄り駅でいうと、大須駐車場は大須観音駅(と矢場町駅のあいだ)、古沢公園駐車場は金山駅、久屋駐車場は栄駅(と矢場町駅のあいだ)といずれも自転車利用が大きく減った駅ですが、ご覧の通り駐車場の利用台数はコロナ禍以後右肩上がりです。このことを中区の住人あるいはお店を構えている方々はご存知なのでしょうか、それともひょっとして、自転車で来るような貧乏くさい客が減ってせいせいしたわ、もっとたくさんクルマで来てもらってたんと買い物してもらわんとかん、などと思っておられるのでしょうか。
時間があれば地下鉄やバスの利用者数についても調べてみたいところですが、本日はひとまず駐車場のデータの提示のみとさせていただきます。
統計についての補足
名古屋市の自転車等駐車状況調査について、駅ごとの駐輪台数をカウントするのはいいのですが、各駅に含まれる範囲というのが実は年度ごとに変わっていて、しかもそのことがとくにアナウンスされていなかったりします。名古屋市によれば「放置禁止区域に含まれる箇所は、バス停の周辺であっても、その放置禁止区域の駅の放置自転車として集計する方針です」ということで、そのため放置禁止区域指定が拡大すると、以前はバス停周辺にカウントされていた部分が地下鉄駅の台数として集計されてしまうのです。ですので実は経年比較には向かないデータなのですが、台数的にはバス停部分はそこまで多くはないので、ざっくり傾向をつかむことはできるかと思います。
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