土木交通委員会 令和6年6月17日 名古屋市総合計画2028(案)の自転車に関する話題

名古屋市総合計画ですが、現行計画の期限が昨年度まででしたので、次期計画を策定中です。ということで市議会でも議論が行われているようです。いちおう中間案が市のサイトで公開されているのですが、市議会で資料として使われているものはさらに版を重ねたもののようです。

令和6年6月17日の土木交通委員会では、自転車や歩行者に関する施策についての質疑が行われたようですので、一部を抜粋してコメントします。

おか千恵市議(公明・中村区)「次に放置自転車の対策についてお尋ねします。施策27の『歩行者や自転車にとって安全で快適な道路環境を確保』のところです。放置自転車の対策については、これまでも長い歴史があり、数多くのご苦労があったこと、認識をしております。まず、これまでの対策の概略を教えていただけますでしょうか」

山根英雄自転車利用課長「委員ご指摘の通り、本市はこれまで長きに渡りまして、市民の皆様のご理解とご協力のもとに自転車対策を進めてきたところでございます。駅周辺における放置自転車等の台数が昭和62年に64,362台のピークを数えることになりました。 そこで、昭和63年に名古屋市自転車等の放置の防止に関する条例を制定しまして、放置禁止区域を指定するなど、本格的に放置自転車対策にあたってきました。平成6年には、放置自転車のさらなる削減を目指して、それまで無料であった自転車駐車場の有料化を開始しまして、順次対象駅を拡大してきました。 条例に基づいて敵周辺を放置禁止区域に指定したことや、自転車駐車場の有料化を進めたことによりまして、 昨年、放置自転車の台数は6,334台となっています」

かつては自転車の路上駐輪それ自体が問題とされ、全力で取り組むべき課題となっていました。それはなぜかといえば、自転車というのは市民の生活の足であり、利用行動に多少の秩序を求めたところで自転車利用が減ることはないと暗黙のうちに思われていたからです。

しかしもちろん物には限度というものがありました。


名古屋市が放置禁止区域の拡大と駐輪場の有料化を進めていき、道路環境が整わぬまま警察が「自転車は車道通行が原則」と喧伝するようになった結果、多くの市民が自転車を見限ってしまいました。それは上のグラフの「自転車等駐車総台数」を見れば明白です。

おか市議「ありがとうございます。昭和62年の頃に比べますと、現在の台数は約10分の1まで減っているということですね。 過去の委員会でも、令和5年度に栄地区周辺で自転車駐車場を有料化して放置禁止区域を指定したことによって、効果があったと聞いております。先ほど、令和5年度の放置台数は6,334台とおっしゃいましたけれども、その効果がこの数値にも現れているのではないかと理解します。次期総合計画では令和10年度の目標値が5,100台となっております。今の6,300台から約1,200台減少をさせるという目標になりますが、具体的にはどのように取り組んでいかれるのか教えてください。

山根課長「栄地区周辺では昨年、令和5年度に、自転車駐車場の有料化及び放置禁止区域の指定を行ったところでございます。しかし、町から放置自転車がなくなったわけではございませんので、今後も集中的かつ効果的に撤去活動を行うとともに、地域の方々と連携して、自転車の適正利用等に関する啓発活動を実施し、コミュニティサイクルの普及促進を図ることで、目標の5,100台が達成できるように取り組んでまいりたいと考えております。よろしくお願いします」

名古屋市は、自転車駐車場の有料化と放置禁止区域の指定によって、放置自転車のみならず自転車利用そのものを減らしています。

◆高橋委員 ここの自転車駐車場ですけれども、有料化後、計画収容台数減っていくというふうになるわけですけれども、現在の収容台数1299台ということで、それから考えると、750台となると大幅に減っていって、現在の駐車台数収容できないという状況になるわけですけど、有料化されることによって、自転車の利用というのが減るということでしょうか。

◎荒井緑政土木局路政部主幹 委員御指摘のとおり、放置禁止区域及び有料化に伴いまして、従前の利用者の約7割程度に落ち着くところでございます。

名古屋市  平成30年  土木交通委員会  03月12日-01号

栄東地区ではまちのにぎわいや住民の方への影響を考慮して、昨年度駐車台数の約7割となる収容台数の確保を予定しています。放禁・有料化することでマンションやお店などの駐輪場を利用する方、自転車から徒歩などに転換する方が現れて、道路上の自転車の数は減少すると想定しています (これまでの本市の実績では5~6割に減少)。 なお、収容台数は、有料化してラックを整備した場合に何台駐輪できるかという前提で算定をしています。

(令和3年11月11日 住民説明会資料より)

恐ろしいのは、名古屋市は「過去の実績では」という言い方をしているのですが、この「過去の実績」とやらが何箇所で、うちどれだけが「収容台数が需要を十分に満たしていてかつ便利な位置にあった」のかがわからないところです。実は単に入り切らなかったり、目的地から遠かったりしていたのかもしれません。仮にそんなことがなかったとしても、通勤通学にしか使われないような、商業施設もなにもない駅前の駐輪場と、繁華街のどまんなかにある栄とで、有料化の影響を同じように見積もることは正当といえるのでしょうか。

なお名古屋市は「昨年度駐車台数の約7割」という言い方をしていますが、昨年度=令和2年度は新型コロナの流行で外出が減った年です。新型コロナの流行前、令和元年度の駐車台数と、有料化時点での駐輪場収容台数を駅ごとに比較しますと、

  • 高岳:740/1165=64%
  • 久屋大通:950/1837=52%
  • 栄:1931/3489=55%
  • 矢場町:862/2348=37%
  • 伏見:1324/1253=106%
  • 大須観音:370/738=50%

となり、駐輪場が大幅に不足するのは最初からわかっていました。

おか市議「ありがとうございます。地道に撤去活動等、地域の方々にもご協力いただいて、放知自転車を減らせるよう取り組まれるということでしたので、今後も引き続き着実に取り組んでいただいて、歩行者や自転車にとって安心で快適な道路環境の確保に努めていただきたいと思います」

放置自転車対策の大きな問題点は、ここまでという線引がないので無限に成果を上げ続けられるところです。建前としては歩道が通りにくいから、景観が悪いからということになっていますが、じゃあどれぐらい通りやすくなればOKなのか、景観の良し悪しとはなにかといった点について議論されることは一切ありません。もちろん、この地区では来訪者が何人いてそのうちの何割には自転車できてほしいから駐輪場はこれぐら必要という積み上げもなく、現状の道路空間配分を変えましょうという話にもなりません。ただひたすら自転車を迫害して数字を減らしさえすれば実績としてアピールできる、そういう都合のいい施策になってしまっています。

鈴木孝之市議(減税・天白区)「都心部自転車対策の推進ということで、25ページのところに、公共コミュニティサイクルステーションの設置ということで、社会実験というのが載ってますけども、これ具体的にはどんなようなことをやられたか、ちょっと教えていただけますか」

松村豊重都心部自転車対策担当課長「コミュニティサイクルの社会実験につきましてご質問いただきました。コミュニティサイクルにつきましては、基本的には民間の事業者が市内で実施をしております。本市としては直接事業を行うわけではなく、民間主体の事業を支援することによって、コミュニティサイクルを推進しております。具体的には、公共ステーションと呼ばれる、民間事業者が共同で使えるステーションを提供する社会実験を行っております」

鈴木市議「民間の公共ステーションということで、都心部における移動で自転車を使われる方は結構多い。特に地下鉄で、例えば都心部に来た時に、あちこちの移動にこういう自転車が使われるということで、社会実験をされているのであろう。地下鉄で市中心部まできたあとの移動で自転車を使いたいという時に、やはり地下鉄の近くにあると非常に便利だが、緑政土木局交通局との連携みたいなのがあれば教えていただきたい。

松村課長「公共ステーションについては、基本的には、公共交通結節点であります駅周辺などの、民間事業者の努力だけでは設置することが難しいところ、そういうニーズの多いところに設置しております。公共交通の関係がありますので、交通局との連携につきましては基本的には最低でも年に1回、関係部署と連携した形の意見交換を行うことで、いろんな協力をお願いしております。 

大枠としてはそれでいいのですが、ふつうの駐輪場とどちらを優先すべきかというのはきちんと考えられたのでしょうか。いままで栄に自転車で行っていた人が、駅の近所にシェアサイクルのポートができたからといって地下鉄で行くように(そして決して安くはない利用料金を払ってシェアサイクルを使うように)なるかというと、そういうものでもないでしょう。駅やその周辺を目的地として自転車でやってくる人、それから地下鉄やバスから降りたあとでそこそこの距離を歩く人、それぞれの人数比にあわせて、駐輪場と公共ステーションのいずれを整備するか選ぶ必要があるはずです。

鈴木市議「年に1回の意見交換ということなんだけども、現状でいうと、主要な駅のところに何箇所公共ステーションみたいなのがあるか教えてもらっていいですか? 

都心部自転車対策担当課長「公共ステーションにつきましては、今、本日現在でですね。本市としては現在17箇所の公共ステーションを設置しております」

鈴木市議「この17箇所、利用がとても多いんじゃないかと思います。こういうものを増やしていっていただいて、都心部の放置自転車を減らしていくように、今後も努力していただければと思います。以上です」

シェアサイクルが放置自転車対策の銀の弾丸である、みたいな論調はあちこちで見られるのですが、そういう思い込みは早めに捨てていただきたいところですね。

村瀬きよみ市議(青空・中村区)「政策27の関連なんですけども、25ページに対して、事業の341『安心して歩ける歩行空間の確保と自転車通行空間の整備』というものであります。こちらに対して質問させていただきたいと思います。最近では、私の地元である堀川沿いで、車道でも、青色の着色をした自転車通行空間を見かけるようになりました。それに対しまして、以前は歩道内において、歩行者と自転車を分離して通行していたと記憶しておりますが、どのような経緯で今、車道部に自転車の通行空間を整備するようになったのか教えていただきたいと思います」

柴田智裕自転車通行空間担当課長「かつて、全国的に交通事故は多発し、社会問題となりました。 自転車におきましても、交通事故防止や、交通の円滑化が重要となり、本市におきましては、自転車が安全かつ快適に走行できる空間の整備を目的として、平成13年3月に、名古屋市自転車利用環境整備基本計画を策定し、歩道部における自転車通行空間の整備を進めてまいりました。 その後、車道を通行する自転車の安全と、歩道を通行する歩行者の安全の双方を確保するため、平成23年10月に、警察庁から、自転車は原則として車道通行との通達が出され、平成24年11月には、国土交通省及び警察庁により、安全で快適な自転車利用環境創出ガイドラインを策定されたことから、車道通行を流す自転車通行空間の整備を進めております」

村瀬市議「整備の経緯については理解できました。 それでは、道路交通法においては、原則、車両は車道とするということが決められていますけども、昭和45年の法改正で、自転車は歩道も通行は可能ということを聞いております。それでは、今後は自転車は全て車道を通行するということになりますでしょうか」

柴田課長「自転車は原則として車道の左側を通行するということですが、歩道に自転車歩道通行可の交通規制が実施されている場合や、13歳未満の子供、70歳以上の高齢者及び身体の不自由な方が自転車を運転する場合、または車道通行が危険な場合は歩道を通行することも可能です」

ここまで時間を割いて周知の事実をわざわざ確認したということは、そこに関してなにかしら重要な指摘をしていていただけるのかと思ったのですが。

村瀬市議「自転車は原則として車道通行ということも理解していますが、やはり場合によっては歩道の通行もできるということを今教えていただきました。そこに対してですね、市民に十分認識されているかどうかというような疑問を今思っております。ですので、このためにですね、自転車通行空間の利用方法を含め、自転車利用者の通行ルールの周知やマナーの啓発の必要性を感じております。 自転車の通行ルールやマナー啓発はスポーツ市民局の所管なのかもしれませんが。緑政土木局においても、是非関係局と連携して。 自転車利用者へのマナー啓発に取り組んでいただきたいと意見を申し上げて、私の質問は以上で終わります。 

結局なにが問題なのかも明示されず啓発せよとのコメントだけ。実のある質疑をお願いします。

上村みちよ市議(自民・東区)「自転車通行空間と利用につきまして、残念なことに、逆走する方、それから猛スピードで走り抜ける方、あとはスマホを見ながら走る方などがいまして、私も犬の散歩で朝晩1時間歩いてるんですけれども、大変怖い思いをしたことが何度かあります。通行ルールのマナー、啓発に関して必要性を感じているところでありますが、緑政土木局としてどのようなマナー啓発をされているのかお答えください」

山根課長「緑政土木局としては、自転車通行区間を整備するのにあわせて、地元町内会に工事案内をするんですけども、そういった工事PRを活用して自転車の利用マナーについても周知しています。 またスポーツ市民局とも連携して、大型商業施設等で行われる自転車イベントなどにおいて、マナー啓発の活動を実施しています」

あのですね、速度差のある交通を同じ通行空間に割り当てておいて、速いほうが遅いほうを怖がらせる事態をルールとマナーの啓発で防げるのだったら、昭和45年の時点でそうしていればよかったんです。それではどうにもならないことがわかっているので世界中の都市で自転車通行空間を整備しようとしているんです。

上村市議「マナー啓発についての実施ということの答弁ではありましたが、自転車通行空間の整備効果としてはどのようにお考えですか」

柴田課長「自転車の通行空間の整備前後において、車道を通行する自転車の割合は増加しております。具体的には、令和4年度までに整備した路線において、車道を通行する自転車は約4割から6割へと増加しております。自転車の通行位置が歩道から車道へ転換したことで、歩道部における歩行者と自転車の接触リスクを下げていると考えております。また、整備した路線において、自転車関連の交通事故件数も減少しており、整備前後、3ヶ年比較では年平均3.1件から2.2件へと約3割減少しております。 ただし、ご指摘の通り、一定数車道を逆走している方もおり、通行ルールの浸透が不十分な面もありますので、警察や関係局と連携して自転車の通行ルールの周知やマナー啓発に努めてまいります」

上村委員。「これまで自転車通行空間の整備をして、一定の効果があったということは理解しました。より安全安心な自転車通行空間を実施するために、自転車利用者への通行ルールの周知が重要であることから、私からも、関係局と連携して、自転車、利用者への啓発等に取り組んでいただきたいと重ねて意見を申し上げておきます。以上であります」

整備前から4割もの自転車が車道を通行していた路線で道路端に色を塗ったら6割になった、というのはまあ納得できる結果ではあります。それにしても行政はよく車道通行率を成果指標にしたがりますね。本来であればまず自転車通行量を増やすことが最大の目的であるべきで、それに伴って事故が増えない(できれば減る)ことをもう一つの目標とするのが正道というものです。

森ともお市議(民主・熱田区)「これまでシェアサイクル、コミュニティサイクルって言った方がいいのかな、何度も本会議でも取り上げさせていただいたので、今の議論を聞かせてもらって、そして自転車のマナーのこともこれまでをちょっと振り返るとですね、私の理解では緑土さん、スポーツ市民さん、あと教育委員会さん様々なところで、例えばここはこういう風に通るんだよとか、あとヘルメットのことも含めて、学校、小中高への指導等も連携をされていて、実際にもう動いて見えるという向きで聞いてるんですけど、その辺確認ですけどいかがですか」

山根課長「いま委員のお話がありましたように、学校現場であれば教育委員会さんと一緒にやっておりますし、その他一般の方向けにはスポーツ市民局さんと一緒になって、啓発活動等やらせていただいているところでございます」

森市議「もう少し細かく言うと、今回車道に線が引かれました、小学生はちっちゃいからどちらかというと歩道を通ってもいいんだよ、とかいう声かけがおそらくある。じゃあ、中高どうなんだってなった時に、その辺のきっちりとした連携が、これ教育委員会が関わっているのでしょうが、公立高校だけでなく私立高校もあるので、教育委員会だけやればいいものではない。その辺についてのお考え、またはこれまでの経過、今後の方向性も含めていかがでしょうか」

山根課長「繰り返しになってしまいますけども、教育委員会と連携しまして、啓発のチラシとか自転車の安全教室等やっているというところと、あとはですね。スポーツ、市民局さんと連携しまして、自転車走行空間のルールを盛り込んだリーフレットを作成する予定でございます」 

うーん、この話題で質疑がこれだけではもったいないですね。交通安全教育全般ないし自転車に特化した指導について各学年でどれだけ時間を割いているのか、学年が上がるにつれ内容はどう変わっているのか、私立高校へのサポートはどうしているのか、教育効果の判定は、等々この機会に確認しておいてもよかったのでは。

森市議「ありがとうございます。あとコミュニティサイクルのこともあったんで1点だけ確認したいんですけど、先ほど鈴木委員も述べられましたけど、ぱ駅のところにあって駅で降りた方が乗られるというのはこれまでも広がってきているんので、社会実験のとき、あれは確か令和2年か3年かな、数か所しかなかったのが、今は駅出たところにもコミュニティサイクルのステーションができて、10何箇所に広がってるということですけど、問題はじゃあそこで乗った人がどこに行くのか、行き先は必ずしも駅ではないですね、という中で、民間の人たちの中でうちも置かせてくださいというところはどんどん増えてきて、コミュニティサイクルもどんどん増えてきたと思います。で、本格運用というふうに令和8年度計画にあげられてますけど、そうなってくると、シェアサイクル事業者がいくつかあるんで、ここがどういうふうになっていくのか、今後の見通しが付かないとこもあろうかと思いますけど、防災のことだったり観光面だったり、様々な活用、運用が今後もある中で、公として、役所として、乗るスタート地点じゃなくて行き先とか、たくさんコミティサイクルのポートがあった方がいいに決まってるのは皆さん理解されていると思いますけど、今後その辺について、これはもう他局との連携しかないという風に私は思ってますけども、その辺についてのお考えはどうですか」

松村課長 「コミュニティサイクルにつきましてご質問いただきました。委員も先ほどお話いただいたことなんですけれども、コミュニティサイクにつきましては現在、4社の民間事業者が市内において実施しております。そうした中で民間事業者が、先ほど委員もおっしゃいましたけど、令和2年度に社会実験を始めたころは市の提供するポートも非常に少なく、現在は17箇所になっておりますが、民間のポートの数につきましても当初は2社で30箇所ぐらいだったのが、現在4社で千を超えるえポートに拡大してきている状況で、そういう中で公共ステーションをどういうところに置いてくかということでございます。公共ステーションにつきましては、委員ご指摘の通り、交通結節点になる鉄道の周辺に今まで置いてきました。特にコミュニティサイクルは都心部の自転車対策に寄与するということから、当局で社会実験をやって、所管しているわけなんですが、その関係もあって、基本的には都心部を中心に今までやってきました。ただ、実験をしていく中で、都心部だけではなく、例えば名古屋城等への広がりですとか、金山や熱田方面の広がりとか、そういうものも出てきましたので、回遊性や、観光施策の下支えになるように、エリアの拡大をしております。そういう視点を大事にしながら、本格運用に向けてもしっかり考えていきたいと思っております」

この質問にこの内容を答える課長さんは大したものです。ポートの設置はたいへん結構なのですが、ふつうの駐輪場とどちらを優先すべきか、また駐輪空間を確保するために道路空間の再配分をすべきかどうか、そのあたりもしっかり考慮していただきたいところです。

伊神邦彦市議(自民・千種区)「先ほどの答弁の中で、自転車を車道に下ろしたら事故件数が減ったという答弁があったんだけども、これは自転車が自動車と接触する事故なのか、それとも歩行者と接触する事故? どんな事故が減ったんですか、これは」

柴田課長「事故の主な内容におきましては、車道部における自転車の巻き込み事故の減少にございます」

よい質問です。だた堀川通の自転車通行帯は交差点によっては途切れてしまっていますので、巻き込み事故のあったまさにその場所に通行帯があったかどうかというのはきちんと調べていただきたいところです。

伊神市議「自動車との接触事故が減ったということだね。まあのかなりいい数字なんだろうと思います。そこでね、自転車通行空間の整備というところで、現況が128.7kmで、計画目標が197kmということだが、これで一応目標とする道路全部に色が塗れることになるの?」

柴田課長「自転車通行空間の整備としまして、ネットワークをつなぐ整備を行ってございます。こちらの整備におきましては、令和5年3月に学識者、自転車利用者、交通管理者などを構成員とする、名古屋市自転車利用環境整備推進会議へ図り、名古屋市自転車通行空間ネットワーク計画を策定いたしました。今後はこの計画に基づき、おおむね10年間で約110kmの整備を進めてまいります」

(図は名古屋市:名古屋市の自転車通行空間整備について(暮らしの情報) に掲載の名古屋市自転車通行空間ネットワーク計画より)

10年後の目標がこれ、だそうですが、黒い線の「歩道内の通行位置を示す整備」についてはかなり品質…というか幅員にばらつきがあり、自転車歩行者の共存に耐えないような箇所もあります。なので実状を踏まえてこの路線図を更新してくださいと以前自転車利用課さんにお願いしたことがあるのですが、対応していただけていません。

伊神市議「だからこの197kmで整備は済むのかと聞いとる」

柴田課長「令和10年の目標値は197kmですが、本市で考えておりますネットワーク計画の方は、まだ今後行う予定でございます」

伊神市議「わかった。これさ、それだけ有効なものなら、そんな悠長なこと言っとる場合じゃないんじゃないの? 5年で何キロか知らんけども、それ全部やらないかんじゃないの? それ目標ぐらい書いたらどうなの? この197km整備すると、名古屋市が目標とする道路のどれくらいのところが整備できるわけ、これ」

柴田課長「先ほどのネットワーク計画の最終的な目標としましては、260kmを想定しており、令和10年の目標値は197kmになりますので、全体の約70%になります」

このネットワーク計画、「安全、需要、構造、連続の4つの視点で検討し」ているためか、整備対象路線が都心部に偏ってしまっています。つまり目的が「いま現在走っている(=需要がある)自転車の安全性を高める」ことになってしまっているんですね。本来であれば、それだけではなく、自転車利用が進んでいない地域での自動車からの転換を目指した路線というのもあって然るべきなのですが、整備推進会議のメンバーはそこまで意欲的ではないようです。

伊神市議「70%ということですが、やっぱりこれね、それだけ有効なことであれば、もうこの計画目標は260kmにすべきだなこれは。早くやってちょうだいよ、これね。ま、それはそれでお願いしといて、自転車のマナーが今本当にめちゃくちゃひどいんだわね。これ取り締まるのは警察だ。線を引いたりなんかするのは土木だな。土木局と警察との連携はかなり必要だと思うんですが、26ページの事業概要で、自転車を活用推進するため、関係局や民間団体、関係機関と連携と。関係機関というのはこれ警察が入っとると理解すればいいですか?」

山根課長「ここでいう関係機関といいますのは、実は、国なども含めて考えておりまして、この続きであります全国会議等も見据えております。あ、警察も入っております。申し訳ありません」

伊神市議「国との連携は分かるんだけれども、例えばこの道路に青線引きますよっていうと、その所轄の警察と連携するわけでしょう。で、それぐらいの連携をもって啓発活動するのかって聞いてるわけ。で、青切符と言われるやつがこんど2026年までにこう警察が青切符切ると言ってますよね。いっときも早くやってもらわんと、非常に自動車のマナーが悪いわけだ。こういったことも土木と警察が連携して、やっぱり早く青切符を切れるような体制、これ連携していかなかんと思う。そういったことをきちっとやれるのかと聞いとるわけ。

路政部長加藤「ただいま委員からご指摘いただきました通り、警察との連携というのは非常に重要になってまいります。先ほど車道に自転車を下ろすというときに、通達という話をさせていただきましたけれど、それが平成23年に出ておるわけでございますけれども、実はその後にですね、さらにということで通達が出されております。令和4年の1月でございますけれども、その段階で警察庁の方もやはりそういった課題を十分認識しておりまして、歩道での歩行者と自転車の混在というところに、やはり非常に問題を感じているというところで、その対策いたしまして、3本の柱ということを出しております。その1つが、先ほど委員からございましたように、自転車の通行空間の整備をして、ネットワーク化することによりまして、路上に自転車が走る場所を明示することによりまして、自転車利用者がそこを通るということに気づいていただくという啓発の効果もある、ということはございます。それと次の柱がやはり交通安全教育の広報啓発というところ。これはやっぱり大事です。もう1つの柱が先ほどあったように、あの交通違反に対する指導取り締まりということでございますので、私どもも連携してこの3本の柱をしっかりやっていくことによりまして、交通安全の確保をしていきたいという風に考えておりますのでえご理解賜りたいと思います」

さらっと自転車通行空間&ネットワークの整備を「路上に自転車が走る場所を明示」に矮小化しているところが残念きわまりないです。自転車利用者がそこを通るということに「気づいて」いないから歩道を走るのだと思っているのですね。

伊神「ぜひね、それ進めてもらいたいと思うの。青線引いたときはね、やっぱり所轄の警察と連携してね、その間、徹底的な取締まりをそこでやると。そこね、後々効いてくるんだマナーに。で、そういった連携をちゃんとやってもらいたい。青線引いてもね、近所のおばさんあれなんだか分からんのだ。 綺麗になったねって言うだけで。 掃除しにくいがね、とかね。ろくでもないこと言われるんだ。だから、そういったことをきちっと連携する。特にその青線を引いた時は特別にその期間だけ取り締まりやるとそこを走るとみんな分かりますから、そういう連携を是非はかっていただいて。あのウーバーイーツみたいな、言ったらいかんか、固有名詞。あれひどいわ、本当にめっちゃくちゃ。3べんぐらいぶつかって死にそうになったから。本当ね、ちょっとあの辺のところの取り締まりもきちっと警察と連携をして欲しいということ、これはお願いして終わります」

その青線とやらが出たり消えたりするような環境でいったいどういう取り締まりができるのでしょう。

なお上の投稿にもあるように、木挽町通から堀川東通の東側歩道は自転車通行可。つまり車道は自転車通行に適さないと警察も認めているということです。西側歩道が自転車通行可になっていないのは幅員が狭いためかと思われますが、西側歩道を通っていた自転車が取り締まりを受けて「車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得な」かったと主張したらなんと返事をなさるのでしょう。

とにかく市議のみなさんには、ふだんの名古屋市内での移動に、実際に自転車を使ってみるところから始めていただきたいです。また可能であれば、自転車に詳しい人に後ろを走ってもらって、交通法規に沿った走行がどれだけできているか、確認してもらうといいでしょう。本委員会での答弁は、いまのところ行政とのプロレスにしか見えません。自らの体験に根ざした、そして市民に寄り添った、真剣な戦いを行政と繰り広げていただけるよう切に希望します。

このあと生活道路の話題が続くのですが長くなったので別記事で。

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