これってどういう委員会?
国の自転車活用推進法に都道府県(市町村)は、自転車活用推進計画を勘案して、当該都道府県(市町村)の区域の実情に応じた自転車の活用の推進に関する施策を定めた計画を定めるよう努めなければならない。とあるので、それに従って愛知県もやりましょうね、ということらしいです。メンバーはぜんぶで11名なんですが、うち8名は県の関係者で、外部有識者は以下の3名です。
- 松本幸正教授(名城大学理工学部社会基盤デザイン工学科)
- 佐藤久美教授(金城学院大学国際情報学部国際情報学科 )
- 髙石鉄雄教授(名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科)
委員長の松本教授は都市交通の、金城学院大の佐藤教授はまちづくりの専門家で、この手の委員会・有識者会議にはあちこちで呼ばれていまして、名古屋市の会議でもよくお見かけします。髙石教授はランニングや自転車における運動生理学を研究しておられて、ご自身もマラソンを走られるそうです(自転車はあまり乗らないとか)。
で、2019年7月29日に第1回が、9月30日に第2回が開催されたのですが、実はもう委員会は終わりで、このあと事務局が計画案をまとめてパブコメに出すそうです。なのでまあ、事務局としてはもう突っ走るだけみたいな雰囲気かもしれませんが、愛知県民のみなさまにおかれましては、計画案を熟読のうえぜひともパブコメの提出をお願いしますよ、といったところです。
運営についてひとこと
第2回は時間が90分間とってあったのですが、最初の45分間が事務局による資料の説明に費やされました。これ、名古屋市の会議でも同じような感じだったのでどこもそうなんだと思いますが、たぶん会議を効率化しましょうみたいな話があったらまっさきにやめるべきことですよね。資料なんてあらかじめ配って読んでおいてもらえばよい。補足説明があるならそれも別紙で用意すればいい。はっきりいって見直すべき悪い習慣です。それから、委員のみなさんがあまりにも発言に消極的すぎました。第1回では佐藤教授がそれなりに意見を述べておられたのですが、第2回では佐藤教授が欠席され、松本委員長が意見を求めても会場は静まり返ったまま。しょうがないので委員長がいろいろ質問や要望を投げかけるのですが、やはりお一人では限界があるというか、半分くらいはさして重要でない内容になっていました。会議の最後に「みなさん一言ずつ」みたいな調子で県側の方々もしゃべっていたので、議事録上はそれなりに盛り上がったかのように見えるかもしれませんが、実際のところは盛り上がりにはほど遠い感じでした。残念です。
会議の内容と発言
会議では、「愛知県自転車活用推進計画(素案)」も配布され、そこには現状分析と抽出された課題、それに対する目標と具体的な施策が列挙してあるのですが、話し合いのベースとなったのはこの素案ではなく、もうひとつ用意されていた資料、目標と具体的な施策についての説明資料でした。発言としては松本教授:自転車ネットワークの構築、県のポジショニング、市町村との連携
佐藤教授:市民やツーリストの自転車利用、ルールの教育
髙石教授:自転車通勤、スポーツとしての自転車
といったふうな分担がされていました。以下、第1回での発言も含めて気になったところを個別に取り上げます。
佐藤教授「自転車は車道を走る必要があると言いながら、車道を走るのは怖いと感じる。まずは安全確保をしっかりと進める必要があり、安全を確保するための施策を実施してほしい」(第1回)貴重な一般市民目線の意見です。自転車利用促進のいちばんのキーポイントなのですが、すでに車道をガンガン飛ばしている自転車愛好家からは軽視されがちです。
佐藤教授「教育については、非常に良いと思われるが、学校だけだと、学校教育を終えた人が自転車のルールを学ぶ場所がない。NPO などと連携して、自転車の乗り方やマナーを学べる場を作れると良い」(第1回)NPOというと思い出すのが尾張旭セーフティーサイクリスツネットワーク(OSCN)さんですかね。あと名古屋市では小学生と高齢者を対象に自転車安全利用講習会を開催していますが、これなんかも講師はNPOの方だったりするのかもしれません。この手の講習会の内容にはおおいに興味があるので、そのうち子供をダシに参加してみようとは思っているのですが。
松本教授「自転車の活用が必要ではあるが、そもそも大前提は、歩行者が優先されるべきであり、それを忘れてはいけない。オランダやドイツは自転車が盛んであるが、歩行者からすると非常に危ない。それでいいのか。イギリスは最近自転車道が増えてきているが、イギリスでは明確に歩行者優先としている。たとえば歩道を横切るところにはハンプがある。この観点は重要なことである」(第1回)ほいデータどん。
ただまあ、オランダに限って言えば、あまりにも自転車利用者が多いので、歩行者がないがしろにされることもあり(信号のない横断歩道を渡ろうとしてもクルマが止まらない日本ほどではないかもしれませんが)、それでも必死に減らしたクルマがまた増えるよりはずっとマシだということで、自転車の多少の無法はとやかく言われないといった現状があるそうです。
髙石教授「太平洋岸自転車道を整備中ということだが周知すると自転車に乗らない人から反感を買わないか。私はランナーなのでうらやましく思う」渥美サイクリングロードのことですね。あそこジョギングとか散歩とかする人いるのだろうか…。
事務局「太平洋岸自転車道は自歩道として整備している」(第2回)
松本教授「自転車とクルマの通行区分をどう分ければいいのか。自転車道を作るのは難しいだろうからキャッツアイのようなものを設置するのはどうか。夜間の視認性も高い」(第2回)「自転車道は道路空間に余裕がなくて難しい」は「クルマに割り当てられた既得権益を取り返すことができない」と読み替えるといいと思います。そうやって矢羽根ばっかり作っているのでいつまでたっても自転車利用が増えないのです。
あと、車道と自転車道のあいだには、ドライバーが「これにぶつかったらちょっと修理代がやばそうだぞ」と思うようなものを置かないと、防御効果は薄いです。下記の記事で紹介されているコンクリート製のものなどがちょうどいいのではないでしょうか。
スポーツ局松井課長「自転車でスポーツというよりもまずは安全に自転車を使えるようにしていきたい」(第2回)以前の記事でも書きましたが、まずは子どもたちが安心して自転車を乗り回せる環境を作らないと、スポーツとしてやろうなんていう気にはならないのではないでしょうか。こちらの記事でも同様のことを主張している方がおられますのでご一読ください。
愛知県警高木氏(代理出席)「小中高で交通教育をするとなると、学校の数が非常に多く、警察ではサポートしきれない。免許を持っている人であれば、講師としてのトレーニングを少しやれば講習ができるのではないか」(第2回)そうですね、講師養成講座をしっかり組み立てて、適切な報酬を払うのであれば、やりたいという人もいるかもしれません。
名古屋工業大学鈴木弘司教授(松本教授に伝言)「海外事例を、とくにイギリスを調べてみてほしい」(第2回)ロンドンの取り組みはたしかにわりとホットです。こちらの動画がわりとコンパクトで観やすいかと思います。
髙石教授「教育でもっとサドルを上げて乗るように教えてはどうか。日本人はサドルが低いからスピードが出せない。スピードが出れば車道も怖くない」「ママチャリが普及しすぎたのが問題。思いし乗り方も悪い。もっといい自転車に乗る機会があるといい」はい、ママチャリ悪者論ですね。
松本教授「日本は欧米とは違う。ママチャリというものの存在を考慮に入れなければ」
- 交通事故が増えたせいで自転車が歩道を走っていいことになった
- 歩道を走るのに最適かつ安価なママチャリが普及した
- そのせいで自転車の持つ本来のポテンシャルが知られないままになっている
- スポーツ自転車で車道を走ろう!
という論法です。これ、スポーツ自転車乗りのハートにはけっこう響くんですよね。俺だけが自転車の良さをわかってるんだぜ、みたいな。実は私もいっときハマっていたのですが、いろいろあって抜け出しました。これって正しくは
- 交通事故が増えて自転車が歩道を走っていいことにされた
- おかげで自転車道はまったく整備されなくなった
- クルマが横をびゅんびゅん走る車道を走ろうという命知らずは少数派で、その他のみんなは歩道を走ることにしたので安いママチャリで十分だった
- 追突されて死ぬことを恐れない荒くれ者だけが車道を走っている
という構図なんです。誰も車道を走らないのはスピードの問題ではなく、単にそれが危険だと知っているからです。スポーツ自転車乗りはクルマとの相対速度が低いのでこの危険を実感しにくいんですね。相対速度がなんぼだろうが後ろからどかんとやられたら電柱やら標識やら路上変圧器やらに激突して死ぬんですがそのことがわかっていない。
あとついでに言わせていただければ、自転車先進都市ではみなさんママチャリに乗ってます。コペンハーゲンでもアムステルダムでもいいので自転車が走っているところの動画を検索してみてください。ママチャリはちっとも特殊ではないし、髙石教授のおっしゃるようにサドルを上げれば楽にスピードを出せます(この点だけは正しいですね)。
あとついでに言わせていただければ、自転車先進都市ではみなさんママチャリに乗ってます。コペンハーゲンでもアムステルダムでもいいので自転車が走っているところの動画を検索してみてください。ママチャリはちっとも特殊ではないし、髙石教授のおっしゃるようにサドルを上げれば楽にスピードを出せます(この点だけは正しいですね)。
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