名古屋市西区浅間町・国道22号に自転車道が開通

われらが名古屋市には、これまで自転車道が4箇所ありました。久屋大通駅周辺の桜通(平成23年6月開通)、市役所北側の出来町通(平成23年8月開通)、鶴舞駅周辺の空港線(平成24年3月開通)、伏見駅周辺の伏見通(平成30年に自歩道からアップグレード)です。そして今年、令和3年4月初旬、名古屋市で5番目4番目となる自転車道が、西区は浅間町駅周辺の国道22号線で開通しました。写真でご紹介します。

(2022-03-07追記:市役所北側道路は構造的には自転車道そのものなのですが、愛知県警に問い合わせたところその空間が何であるかは自治体が決めるとのことでしたので名古屋市に確認しましたら歩道として整備したものであるとの回答でした)

安全+快適をハイレベルで実現、至高の自転車通行空間

すいませんマンションポエムの見すぎですね。さすがに至高は言い過ぎで、諸外国と比較すると「がんばりましょう」な部分も多いのですが、名古屋市にあっては過去最高の出来ばえと言って差し支えないです。


脇道との交差点部の屈曲は最低限に押さえられ、ガードレールの張り出しも自転車0.5車線ぶん(自転車道の1/4の幅)でほぼ統一されています。


出入り口

細かく見ていきましょう。この自転車道は東西に伸びているのですが、東端は主要道路との交差点ではない部分で終わっているので、自歩道に逃す処理になっています。


反対車線も同様です。車道からの流入・車道への流出はとくに指示されていませんが、見通しもいいことですし、まあみなさんうまくやれるでしょう。






この先(写真手前側)は歩道が二股に分かれていまして、車道側はいささか窮屈です。左右どちらの交通量が多いのかわからないので、なんともいえないところですが。

いっぽうこちらは西側端のようす。なにやら出口にどーんと柱が立っていますが…。



実は自転車道の整備にあわせて交差点がコンパクト化されていて、以前はこの柱に信号がひっついていたのです。


にしてもちょっとこの赤い柵はやりすぎですよね。おそらく柱は近いうちに撤去されるのでしょうが、それまで何もしないというわけにもいかないので仕方なく設置した、という雰囲気です。柱を明るい色で塗っておけば十分な気もしますが、管轄が違うので難しかったのでしょう。うーん、邪魔くさい。


反対側(南側)です。こちらも真正面に信号の柱がどーんとそびえ立っています。このおかげで左折車との距離がとれて、巻き込みが起こりづらいのはありがたいのですが…。



ここの段差! これはいさぎよく削って出入り口を広くしてほしい!


遠目だと、青い矢羽根がポールの右側を通っているようにも見えてしまい危険です。

バス停

同じく自転車道のある桜通線では、基幹バスがけっこうな頻度で走っているので、バス停は「歩道-自転車道-交通島(乗降場)-車道」というレイアウトですが、国道22号線のバスは1時間に1本です。


そのため、「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」内の「バス交通が多くない路線」用レイアウトが採用されています。

スロープの傾斜はこれぐらい。ロードバイクでも不快ということはないと思います。常識的な速度なら(笑)。かさ上げ部は本当ならもうちょっと長いはずなんですが、すぐ横に既存の切り下げがあるので前部ドアの横のみ高くしてあります。


手前には「徐行」「バス停注意」の路面標示がありますが、走りながら確認するには小さすぎるように思います。歩道の端に立っている黄色い看板も目立たない。もうちょっと手前に、もっと文字の大きな看板を立ててもいいかも? あるいは路面にでかでかと文字を書くとか。ただ目の前にバスが停まっていれば、自然とバス停も目に入るでしょうし、お客さんが乗り降りすることもわかるでしょ、という気もします。


もう一箇所。こちらは屋根がないので存在感が薄いですが、待っている乗客はこのほうが見つけやすいかも。几帳面なことに前後ドアの間にもきっちりガードレールが設置されています。



交差点部

主要道との交差点では自転車道と横断歩道が交差しますので、このようなハンプが設けられています。伏見通の自転車道と同じタイプのものですね。ですが、居眠り防止ペイント程度の高さでハンプと呼ぶのはちょっと抵抗があります。位置も横断歩道に近すぎますし、もうちょっと手前の路面に横断歩行者のピクトグラムを大きく描くぐらいで十分ではないでしょうか。
あと、自転車道内に横断歩道が描かれていないのも気になりますね。



自転車レーンですと、交差点付近で右折レーンの幅を確保するために矢羽根に変わったりしてしまい、横断待ちの左折車に行く手を阻まれることが多々あるのですが、こちらは交差点内でも車道や歩道と混ざることなく独立した走行空間が維持できています。素晴らしい(ただし自動車が自転車横断帯をふさがない限りにおいて)。





この交差点もコンパクト化されていまして、よく見ると改修前の横断歩道の位置の切り下げ部分がわかります。


とはいえまだまだ改良の余地はあります。たとえばこちらの交差点。



写真の親子連れはこのあと左にむかって横断したいのですが…。


赤信号の待機場所がとくに設けられていないので、このように自転車道をふさいでしまうことになります。


別記事でご紹介したProtected Intersectionと呼ばれる形式の交差点には待機スペースが設定されています。日本での導入には道路構造令だのなんだの障害があることは想像できますが、そこはお得意の社会実験という名目でなんとか乗り切っていただきたい。


それからもう一点。脇道交差点でなぜか一箇所だけ、ガードレールの屈曲部が大きい(自転車道の幅の1/4ではなく1/2)ところがありました。理由はよくわからないのですが、できればここも他の部分と同じようにしてもらいたいです。



おまけ。桜通で見られるものと同様の、自転車道からしかアクセスできない駐輪場があちこちに設置されていました。この地下鉄出入り口の目の前なんて最高のロケーションじゃないですか?


おわりに

当初、平成30年中の工事が予定されていたこの自転車道、完成までにずいぶんとかかってしまいましたが、こうしてその出来ばえを眺めてみると、待たされた甲斐があったな、と感慨もひとしおです。わずか700m、信号に引っかからなければ3分もかからずに通り抜けてしまう道ですが、どこから飛び出してくるかわからない自動車や歩行者に怯えながらブレーキに手をかけて走る必要もなく、幼児からお年寄りまで誰でも気楽に自転車に乗れる場所のありがたさをしみじみと感じさせてくれます。



ここを走っていれば「運転しているとフラフラ走る自転車が怖い」「歩いている横を走り抜けられると恐ろしい」「だいたい自転車は都合よく歩道と車道を使い分けている」「危険な逆走が目立つ」などと言われることは一切ありません。そう、自転車が危険なのは、非難の対象となるのは、ほとんどの場合において貧弱な走行環境が原因なのです。

もともとこの自転車道は、日銀前交差点まで伸びて伏見通の既存の自転車道と接続するという計画だったのですが、ここしばらくは大須観音前の自転車通行空間がホットな話題になっていて、国道22号のほうは長い間検討会議も開かれていないようです。しかしこれだけ素晴らしい道路がここで途切れてしまうのはあまりにももったいないことです。
どうやら大須観音前は(残念なことに)自転車レーン整備ということで決着がついたようですので、こちらの整備計画を一日も早く再開し、進めていただけるようお願いしたいと思います。

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