矢田川河川敷の遊歩道・ほか



 9月になり朝晩は少し過ごしやすくなったので、久しぶりに矢田川河川敷の遊歩道でランニングをしました。その途中でこんな看板を見かけました。


この先には、堤防を守るための護岸ブロックを設置しています。施設が損傷する可能性があるため自転車等の通行をご遠慮ください。
なんとまあ。場所は宮前橋と矢田川橋の間で、この写真の左側、一段高くなったところが大幸公園野球場になっています。野球場の隅っこを通っていけば護岸ブロックを避けることはできるのですが、若干遠回りになるのと、とくに通路として整備されていないので雨が降ると地面はぐちゃぐちゃ、晴れていても轍で凸凹がひどいので、この川沿いルートが通れなくなるのは少しばかり不便です。
自転車ごときの荷重で護岸ブロックが破損するというのは、正直かなり疑わしかったのですが、決めつけはよろしくないということで後日写りのいいデジカメを持って現地調査に行ってみました。

…これ、とか? 自転車のタイヤのあとに見えないこともないですが、ブロックの表面の汚れが剥がれただけ、のような…。これはもう管理者の庄内川河川事務所に聞くしかないな、そうだどうせ電話するなら庄内川の河川敷にももっと遊歩道を作るようにお願いしよう、ひょっとしてすでに計画があったりしたら悪いからちょっと調べてみよう…などとやっていると、以下のページが見つかりました。

なんでも平成18年(2006年)3月~平成20年(2008年)3月にかけて5回にわたって開催された有識者会議で、堤防道路を自動車がガンガン走るのはいろいろ問題があるのでなんとかしましょうという提言がなされたようです。提言の中には一車線規制なんてものもあったので、それなら横に歩道と自転車道を作ってもらえたら最高じゃないか、ということで、提言の実現のための動きがないかどうかも河川事務所に聞いてみることにしました。

なんてことをやっているうちに10月になり、子供とサイクリングにでかけたところ、看板の文面が変わっているのに気づきました。


この先には、堤防を守るための護岸ブロックを設置しています。ここは通路ではありません。やむなく通行する場合は、自転車を引いて歩くなど安全に留意ください。

自転車を押すのではなく引いて歩けというのは珍しいですが、とにかく「通行をご遠慮ください」に比べると格段の譲歩です。ははーん、これはきっとどこかからクレームがついたな、などと考えながら、庄内川河川事務所第二出張所に電話。受け付けてくれた方が、担当者ではないものの事情に通じておられたので、経緯をお聞きすることができました。

  • 庄内川河川事務所に「矢田川のサイクリングロードをきちんと整備してくれ」という電話
  • サイクリングロードなんて作った覚えはないぞ、どういうことだと詳しい話を聞いたところ、この護岸ブロック上が通行に使われていることが判明
  • 自転車の通行を意図した空間ではないので、最初の看板を設置
  • 実際にブロックが損壊したわけではないが、通行する自転車のスピードも速いと聞いていたので将来的な破損を懸念してのこと
  • 看板を見た市民から「自転車を悪者にするのはどういうわけだ」と電話
  • 文面を再検討し看板の入れ替え

まずもって河川事務所が河川管理道路の使用実態を把握していないというのが残念ですし、通行実績を無視するような形で警告文を掲示したのも、まあ管理道路の本来の用途を考えるとわからないでもないのですが、地域住民の使い方を尊重しましょうみたいな動きもあるわけでして、もうちょっと配慮が欲しかったところです。

最終的な対応としては満足のいくものでしたので、野球場内の通路を雨が降っても大丈夫なように整備してほしいと名古屋市に伝えておいてくださいな、と要望しておきました。

堤防道路検討会による提言への取り組みについては後日管理課の方よりお電話をいただきました。ありがとうございます。

  • 毎年担当者レベル(事務所の課長クラス以下)で名古屋市と話をしている。
  • 内容としてはわりと細かい困りごとが多い
  • たとえば名古屋市からは、交通安全上の課題として、事故があったから歩行者用の信号を設置してくれとか、カーブにカラー舗装をしてくれとか、カラー舗装の継ぎ目の騒音について住民の苦情があったので対策してくれとかそういったリクエストがある
  • 河川管理事務所からは、浸水被害があった際の水防活動(堤防上にポンプ車を設置したり)の障害となるので、洪水時には堤防道路を通行止めにしてくれ、とお願いしているが、道路交通優先ということで、協定も結べていないのが現状
  • 高水敷の緊急河川敷道路(堤防が地震で沈下したりして通れなくなったときのための通路)はいまのところ建設予定はまったくなし

ということで、名古屋市のクルマ脳には困ったものですねーと同情しかありませんでした。

庄内川にはいちおう庄内川自転車道なるものが整備されているのですが、基本的にはレクリエーションのためであって、交通を担うものとは考えられていません。しかしながら都市内部の道路空間における車道の再配分が遅々として進まない現状では、堤防上や高水敷の管理道路は、自転車・歩行者といったアクティブトラベルを支える貴重なインフラ候補に見えてしまってしょうがありません。ことに高水敷は、増水時には使えなくなってしまうことを考えると、自転車道として整備するのは適当といえます(大雨の日に自転車に乗りたいひとはあんまりいないでしょう)。堤防上の道路にしても、いまのところなし崩し的に自動車専用道路みたいな使われ方をしてしまっていますが、堤防へのダメージやメンテナンスコストを減らすという大義名分があるぶん、再配分は容易なはずです(あくまで都市の道路に比べたら、という話ですが)。上に書いたように、現状では河川管理道路が良好な自転車インフラとして利用されているという認識すらしていただいていないのですが、今後は積極的な働きかけで、河川空間をまちのため、地域のために役立てていただけるようお願いしていくべきと感じました。

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